あばん・ぎゃるど      XM北東北通信 by フジワラ >>> メンテナンス・アドバイス

 フロントキャリパーのオーバーホール

11万超のフロントキャリパーをOHしました。ディーラーで片側OHの標準工賃が\34,000だと言われ腰を抜かしましたが
自分でやったらもっと腰が抜けました。(^^;

手順は構造がほぼ同じBXヘインズの記載を和訳して用いました。手順はそれにある通りで抜けはありません。が、1行クリアするのに悪戦苦闘するので注記の形でご報告させていただきます。ちなみにXMヘインズでは…"ディーラーにやって貰いなさい"…だそうです。

【準備】
 ・軍手など意味をなさないくらい手が汚れます。薄手のゴム手袋を用意します。
 ・キャリパー固定に十分な万力が必要です。無いと相当疲れます。
 ・ぼろ切れ多量。大きめのプラスチック製ブラシ、歯ブラシはすぐ駄目になります。
 ・ブレーキクリーナーロング缶2本以上。
 ・サイドブレーキ機構脱着用SST。必須ですが、自作できます。
 ・ピストン回しSST。ピストン再セット時に半端でなく回さないといけません。
  なくても作業はできますがパッド交換時なんてもんじゃありません、覚悟して下さい。
 ・自転車空気入れ。ビニールプール、ゴムボート用アダプタ(プラ製で先窄まり)
 ・キャリパースライドボルトの脱着にT-50のトルクスレンチが必要です。
 ・キャリパーサポートの脱着に18mmのソケットが必要です。(サポートは外さなくてもリペアは可能)
 ・30cmくらいの鉄管、銅管。上記ボルト回し時のエクステンション。
【予習】
 ・ネット等で国産車(サイドがあるリアディスクキャリパー)を含め行程を十分理解しておきましょう。
【リペアキットの内容物】
 ・片側分で\4550です。
  ピストンシール 1個
  ピストンダストブーツ 1個
  サイドブレーキユニットダストブーツ 2個(1個ずつ2種類)
  サイドブレーキユニットダストブーツ固定用タイラップ 1本
  サイドブレーキ用ディッシュスプリングワッシャー 5枚
  サイドブレーキ用平ワッシャー 1枚
  サイドブレーキアーム用Cクリップ 1枚
  サイドブレーキアーム用スプリング 1個
  自動調整用スクリューシャフト 1本
  自動調整用スクリューシャフト用 o-ring 1個
  キャリパースライドボルトダストブーツ 4個(2個1セットが2種類)
  ブリーザー用キャップ 1個
  キャリパ固定ピン用割ピン 1個
  キャリパ固定ピン用アダプタ 1個
  白ブレーキグリス 1個(必要分)
  フランス語リペア手順書(ちょっと図解つき。英訳−>和訳しましたがよく分かりませんでした)

  ブーツ類が2種類入っておりました。前期用、後期用でしょうか?

【こ、こんな筈では・・・ヘインズにない色々】

●取り外し時の作業の注意事項

・キャリパースライドボルト
 締め付けトルクはそんなにきつくないので最初のひと回しは楽です。しかし、緩み止めのため、ネジ山終端が成型されパテ盛りされているので、中間〜抜けるまでが結構キツイです。なめたかと相当アセリました。締める、緩めるを繰り返すといいようです。

 スライドボルトはブーツから手でひっぱったくらいは抜けません。ボルトのお尻に(-)ドライバなどをあてプラハンでコンコンと軽く叩き出します。

 あとで滑って大変なので古いグリースは完全に洗い流します。スライド部のキャリパー側内壁には2つの輪っかがセットしてあります。テフロンのようなもので表面加工してありますので傷をつけないよう注意してください。ダストブーツの脱着には関係ないので外すことは考えないこと。
  
・キャリパースライドボルトダストブーツ
 リペアキットに入っている直径の小さい方を使います。金属リングが埋め込まれた部品になります。蛇腹部分及び内側の一部を金属リングが見える分、切りとってしまいます。
 ブーツ内側の金属リングとキャリパー本体とのわずかな隙間に(-)ドライバをあててこじると簡単に外れます。逆に、引っ張ったり外側の隙間をこじっても絶対に外れません。

・ピストン
 自転車空気入れで簡単に抜き出せました。アダプタはブレーキホース接続口に合うように加工して差し込みます。ピストンには自動スキ調整機構が詰まっているので重い!ずっしりきます。国産のフロントに見られるような計量カップみたいなものとは全く違います。

・サイドブレーキフォークアームの引き抜き
 基本的にSSTが無いと無理です。代用品が自作可能なので時間を惜しまず作成しましょう。なぜに必要かは次のURLのBXキャリパー構造についての解説をご覧下さい。
http://www.bx.citroen.org/m29/m29.html

私は下図の赤丸部をSST代用品として自作しました。

 

赤丸部拡大図
"ワイヤークリップ"ホームセンタで購入。
左図のU字部品とボルト2ヶ、ワイヤ固定器具で1セットです。\100程度。

万力に固定しつつ赤部分をハンドグラインダーで削ります。概寸を記しましたが削りだしはリペアキットの現物合わせしながら行います。右側の切りかきがスライドスクリューの頭に引っかかりその状態で安定すればいいわけです。左はキャリパーに干渉しないよう適宜切り出します。てっぺんの切り出しは○断面の素材ですのでクランプで押すときに滑らないようにするためです。

木工クランプ、木片と併せて、下記のようにキャリパーにセットします。しっかり安定したところで圧縮し、フォークアームを引き抜きます。10分かかりません。

・ピストンダストブーツ
 キャリパースライドボルトダストブーツと同様に金属リングが埋め込まれた部品になります。
 これまた、引っ張って外れるような代物ではありません。内側をよーく観察すると切りかきが4カ所あります。すかさず(-)ドライバをあててこじると簡単に外れます。
 ところが、リペアキットに入っていたブーツには切りかきがありませんでした。もし発見できない場合は、キャリパースライドボルトダストブーツと同様にゴムを切除して金属リングを露出させた上で内側からこじりだすといいと思います。
●取り外し時の作業の注意事項

・キャリパースライドボルトダストブーツ
 両側のブーツをキャリパーにつけてから、スライドボルトを入れようとしても絶対入りません。
 キャリパースライドボルトの溝にダストブーツを合わせる場合、それぞれ下記の方向でしかできない為です。

 1. 外側ブーツを叩き入れる。
 2. 内側ブーツをキャリパースライドボルト溝にあわせた上で挿入する。
 3. 外側ブーツをキャリパースライドボルトの溝にあわせる。
 4. キャリパースライドボルトを押し込んだうえで内側を叩き入れる。
  叩き入れ時は21mmのソケットコマを被せてそれを叩きます。

ブーツを穴に対して垂直に仮置きしておきます。
ソケット端を埋め込み金属リング端にあうように被せて一息で叩きいれます。力はさほど必要ないです。


埋め込み金属リング端

・サイドブレーキフォークアーム
 スライドスクリューにはリペアキット付属の小さなo-ringをはめなくてはいけません。ディッシュスプリングワッシャ5枚を規定の向きに従ってスライドスクリューに挿入した後で、LHMを塗布しスライドスクリューの横溝にはめ込みます。
 フォークアーム用のバネ、タペットをセットし、前述のようにSSTを使ってスライドスクリューとディッシュスプリングワッシャを圧縮した上でフォークアームを横から挿入します。
 最後にフォークアーム用のバネを(-)ドライバで圧縮しながら1本ずつフォークアームに引っかけます。

・ピストンの挿入
 なんたってこれが大変!。新品ピストンシールは、それ故に0.Xmm単位で直径が狭いです。この0.Xmmの為に、すんなり入っていきません。定位置に納めるまで2つの作業を行いますがどちらも相当の力がいります。

まず、軽く挿入すると左図の位置でピストンが止まります。
シールの僅かな出っ張りに引っかかって止まっている状態です。
シールの巻き込みを防止するため、ピストンの底部はラウンドしています。
次に左図に示すようにシールを越えた位置まで押し込むのですが、これが大変です。指の力ではとても入っていきません。ラウンド部にシリコングリス等を塗布してもかなりきつかったです。
押し込みがうまくいくと、サイド機構からきているスライドボルトがピストン内のナットに填ります。ここからはパッド交換時のように時計回りにピストンを回し入れます。
が、これも大変です。軽く回る代物ではありません。
ピストンが斜めになっていることも考えられますので堅いのは確かですが、その辺りを十分確認してください。

垂直が保たれている場合は回し入れの際、"チリチリ"と金庫のダイアルを回すような音がします。
パッドが入る位置まで回し込みますが、1時間半も回し続けました。パッド交換よろしく角棒を使いましたが
すべって大変です。SSTを考えなければいけないと思います。

・ピストンダストブーツ
 緑のペイントがある方が外側になります。これもキャリパースライドボルトダストブーツの様に叩き込みます。何かしらを被せて叩き込めばいいのですが、35mm以上のソケットコマなんて見たことありません。
 しょうがないので、斜めに挿入して円周にそって歪まないように注意しながら角棒をあてて押し込みます。角棒の先にはゴムキャップ等を被せてブーツを傷つけないような措置をしてください。

 ピストンを完全に納めてからブーツをピストンの溝にセットするのは難儀しそうです。ピストンが2cmくらいせり出している時にブーツを装着し、溝に納めるとよいと思います。ただし、そうするとピストンを回すときにブーツ傷つけることも考えられるのでどちらが安全、簡単、完璧というものではありません。

【最後に】

うちのXMは以下の現象が出始めたのでOHに踏み切りました。

・サイドブレーキの自動スキ調整を、手順にそって調整するも何度かサイドを効かせると遊びが多くなる。
・サイドブレーキをリリースするもピストンの戻りが悪く"キーキー"鳴く。
・踏力に応じた効き方をしてくれない。

サイド関係が多いですが、ワイヤーは新品です。
上記はOHで解消されましたが、同時にブレーキホース交換、エア抜きも行ったのでそちらに起因した現象もあったのかもしれません。

LHDのXMは、プレッシャレギュレータのブリーザーを開けただけではブレーキ周りは減圧されません。プレーキペダルを数十回踏んで減圧してください。でないと....


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